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5月24日、読谷村の農業生産法人有限会社「アグリ読谷苑」の生芋の初出荷式がありました。「えっ、今ごろ?」と訝しがる方もいらっしゃると思いますが、実は「生」ではほんとに初めての出荷なのです。
紅芋に限らず沖縄のイモ類は、アリモドキゾウムシ、イモゾウムシなどの日本本土にはいない病害虫がついている恐れがあるため、植物防疫で生での沖縄県外への持ち出しが規制されてきました。観光客が空港の手荷物検査で止められるのはよくあることです。イモ以外にもヨウサイ(ウンチェーバー)とかアサガオなどの仲間もだめなんです。まるで外国扱いですよね。確かに沖縄は本土からすると「海外」ですけど。 唯一公に持ち出せる方法は那覇市の植物防疫事務所で蒸熱処理されたイモ類だけでした。ただし、営利目的では利用が制限されていました(つまり商売ではダメ)。しかも設備が小さいので大量の処理はできません。少量でも時間がかかります。だから観光客のお土産にも間に合うはずがありません。 今回読谷村に導入されたのは、1日8時間の稼動で500kg処理する大型の設備です。植物防疫事務所の認定を受け、ここで処理された生イモだけが県外出荷が許されるのです。ビジネス的には数は少ないのですが、もちろん商売もOK。沖縄の紅イモにとって朗報でしょう。販路の広がりだけではなく、そのことにより九州の紫芋におされ気味だった市場でのブランド力を回復できる可能性が広がったからです。 紅芋が本土市場で人気を呼び一大ブームとなったのは1999年の夏です。テレビの健康番組に加え、新聞、週刊誌、雑誌などがこぞって紅芋の効能やおいしさを記事にしました。芋本来の「自然」「健康」「美容」というイメージに紫色や紅色という「色」が強力なカラーがブームの要因でした。 これより1~2年前(1997~8年頃)には赤ワインブームが全国を席巻したのを多くの皆さんは記憶しているでしょう。いわゆるポリフェノール食品としてその色素が健康に良いとマスコミで取り上げられてからでした。ここ沖縄のスーパーでも赤ワインが飛ぶように売れて品薄状態になったものです。しかし、赤ワインの健康食品としての欠点はアルコール飲料だということです。いくら健康に良くてもアルコールを飲めない人には毒になってしまいかねません。それにとって代わったのが紅芋でした。 紅芋の紫色の色素アントシアニンこそ、最近悪玉として知られてきた活性酸素をやっつける機能を持つポリフェノール食品のヒーローになったのです。それまで売上をのばしてきた北海道産の赤ワインは1999年上半期には対前年比8%も売上を落としてしまいました。紅芋にその地位を奪われたのです。 また、紅芋はさまざまな加工食品として登場してきたのです。東京渋谷のセンター街にある「カフェ・ブルーシール」では紅芋ソフトクリームが十代から二十台の女性に大人気です。1日に3000個以上出るというから行列ができるのも無理からぬことです。吉祥寺のケーキ店では紫芋のモンブランが女性客の人気を集めています。毎年開催される新宿の伊勢丹本店や京王デパートでの沖縄物産展でも紅芋チップスやショコラなどのお菓子は人気商品です。 そういえば大手の菓子メーカーでも紅芋商品を作っています。ポッカや大塚食品が紅芋チップスを販売しています。まだまだ紅芋の人気は続きそうです。 今回出荷する紅芋は備瀬という種類で、表面の皮が白く中が紫の色をしています。読谷のような石灰岩質の土地に合う品種のようです。外が赤紫で中も紫の宮農という種類も沖縄の代表的な紅芋です。九州の芋は種子島紫とかアヤムラサキとかと言って沖縄のものとは種類が違います。1999年8月3日の読売新聞は見開きで特集を組んでいますが「沖縄の紅芋、鹿児島の紫イモ」と書いていました。紅芋は沖縄が本場だという認知度をあげるには絶好の機会だったのです。が、その後沖縄からの紅芋の出荷(加工品)は品不足で減り、逆に九州産の紫芋が原料として沖縄に入ってくるようになったのです。 今回、アグリ読谷苑(製造元)と株式会社ユンタンザ(総販売元)が生イモの出荷体制を整えたことで「沖縄の紅芋」というブランドの確立に向け一歩進むことができると思います。依然として生産量・品質の課題は残っていますが、アグリ読谷苑が農業生産法人としてスタートしたことに課題克服への意欲を感じます。 「おきなわいち」でもユンタンザの商品として紹介し、販売への協力を行っていきます。
by s.t.uechi
| 2001-05-29 13:00
| 沖縄事典
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