おきなわいち


上地哲の沖縄事典 (おきなわ自転?)
by UECHI
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島豆腐の話 (2001年10月17日出稿)

 子供の頃、我が家のお勝手の片隅には使われなくなった料理用の道具がいくつか転がっていた。今はもう無いのだが、あるものはゴミとして処分されたり、あるものは古道具屋に引き取られたり、またあるものは民俗資料館に行ったりしたようだ。
 生活のスタイルが大きく変わってきたのだ。中でも食の内容とスタイルが大きく変わってきたように思う。めまぐるしい変化の中で、多くの食のための道具たちも私の家からは消えて行った。かまど、はがま、鰹節の削り器、石臼、七輪、サギジョウキ(竹製の吊籠)、シンメーナービ(大なべ)などなど。
 中でも、豆腐作りの道具一揃いは無くなった今でも愛着を持って思い出される。収穫した大豆の皮を脱穀する農具、大豆を洗う竹の大ざる、一晩水に浸けておいた生の大豆を挽く石臼、絞る木綿の布、生絞り汁を煮るシンメーナービ(大なべ)、頃合を見て苦汁(海水)を適量、正確に加えて混ぜ、できたゆし豆腐を汲むのにも使う柄杓、木綿を敷きゆし豆腐を注ぎ込む木枠、押し固めるための鉄製の重し、などなど。温かな豆腐の味とともにこれらの道具がはっきりと脳裏に浮かんでくる。
 今は亡き祖母は、豆腐作りのための海水は日が昇る前に汲まなければいけないと言っていた。明るくなると水中の生き物が活動を開始し水がにごると言うのだ。大豆を浸す水はつるべで汲み上げた井戸水。この井戸も五十年近くなるがまだ涸れてはいない。
 これらの記憶が私の豆腐好きの源になっていることは間違いない。

この豆腐作りの道具と手順は、おそらく沖縄に豆腐が伝わった14世紀の頃とあまり変わってはいないのだろうと思われる。
先日、NHKでブラジルの沖縄豆腐作りが紹介されていたが、ほとんど手順は変わっていなかった。ただ、固める木枠が巨大で、できた豆腐の大きさも南米大陸並に豪快であった。
海水を使ってはいけないなど、食品衛生法でずいぶん豆腐作りも窮屈になった感じだ。が、各家庭で作ったり隣近所で分け合っていたのと違い、顔の見えない不特定多数の人に「売る」豆腐作りであるだけに、品質の管理は問われなければならない。
今ではスーパーで買う豆腐だが、やはりどこのメーカーのものがおいしいかは地域毎に決まっているようだ。私の好みの豆腐はいつも午前中で売切れてしまう。

さて、お気づきだろうか。日本の豆腐と沖縄の島豆腐の違いを。
一つは工程の中にある、大豆の生絞りである。日本の豆腐は煮絞りであるところが多い。二つ目は苦汁である。沖縄の豆腐は海水か海水から取った苦汁を使う。硫化マグネシムなどの凝固剤は使わない。三つ目が島豆腐は陸に上がっていることである。本土の豆腐屋さんは豆腐を水の中から取り出して売る。だが、沖縄の豆腐は湿った木綿をかぶって棚に並んでいる。四つ目はアチコウコウ(温かい)で売られているのだ。冷やして売られている日本豆腐との違いである。五つ目はその大きさである。1丁あたりの重さでは日本豆腐が普通約300g、島豆腐は約1kgはある。六つ目はその固さである。何せ鉄製の重石を載せて固めるのだ。チャンプルー料理に使って、野菜や肉といっしょに豪快に炒めても決して型崩れしない。

形状や製造工程での違いを挙げてきたが、その結果として当然ながら味わいも違ってくるというものだろう。どっちがおいしいかなどの評価はここでは差し控えたい。日本豆腐の中にもすごく旨い豆腐があるのも事実だし、島豆腐と称してもまずいものもある。埼玉の真南風の新井さんが教えてくれた川越のざる豆腐は絶品であった。沖縄豆腐と日本豆腐、同じ豆腐として論ずるより違う食品と考えてもいいのではないだろうかと時々思う。
ともあれ、一見しただけでもこれだけの違いがあるのだ。これは食と言う文化の地域性、すなわち個性であり、異文化なのである。厚生省や保健所もそこのところの認識を持って欲しい。でないと法を盾に画一性を押し付けるという愚を再び犯してしまうことになる。

 豆腐は旨いだけではない。栄養豊富な食物である。大豆に含まれる植物性タンパク質は他の豆類の1.3倍という。ビタミンB1、カリウムなどに加え、苦汁に含まれる海水のミネラル成分が豆腐の中に溶け込んでいるのだ。
 沖縄人の一人あたりの豆腐消費量は全国平均の2倍だと言う。豆腐料理も多い。豆腐好きの沖縄人が世界一健康長寿なのも頷けるのではないだろうか。

 さて、いよいよ、「おきなわいち」でも島豆腐を全国の皆さんにお届けできるようになりそうです。翁屋さんが、おいしい豆腐を安全にお届けするため、現在いろいろと研究中です。今回はゆし豆腐について詳しく触れませんでしたが、沖縄の食生活に欠かせないこのゆし豆腐もお届けできるようになると思います。乞うご期待!
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by s.t.uechi | 2001-10-17 13:17 | 沖縄事典

島バナナの話 (2001年10月17日出稿)

 沖縄の島々を歩くと、家々の裏や畑の隅にバナナの木(ほんとは大きな草の茎)が2・3本から数本立っているのをよく目にする。時に鈴なりの青い実を見つけると、いつ頃が食べ頃かなあと想像してその家庭がうらやましくなる。あの濃厚な香りと甘味は輸入バナナと比べられるものではない。
国内消費の99.5%以上は輸入バナナである。産地である沖縄でも輸入モノが島内産を圧倒している。沖縄の市場でも島バナナに出会うのはめずらしい。
さて、島バナナはどんなバナナかと言うと、小笠原亜種と呼ばれているとの事である。マレー原産で小笠原種からきているらしい。一般には並べて比べてみないとわかりにくいのではあるが。まず大きさは一般的に、フィリピンやエクアドルから入っているジャイアント・キャベンディッシュ種よりは小さい。また、台湾バナナの仙人蕉種よりも小さい。しかし、モンキーバナナと言われるセニョリータ種よりは大きい。だが、植物ゆえに出来不出来によって大きさが違ってくるのは避けられない。モンキーバナナ並に小さくなることもある。
輸入モノのバナナは植物防疫上の問題があり、残留農薬や消毒剤の問題が避けられない。青いままで収穫し輸入後薫蒸処理をして室で追熟させる行程をとらざる得ない。市場に出すときにはどうしても房の付け根のヘタの部分がかなり劣化してしまうし、ポストハーベスト(残留農薬)の浸透を抑える意味でも、その部分をカットせざる得ない。したがって、そのヘタの部分はどうしても短くなってしまうので、島バナナに比べヘタが短いし、切り口が劣化しているのがわかる。
だが、なんと言っても違いがはっきりわかるのは食べてみたときの味である。濃い香り、深い甘味、やや酸味のあるこの味はほんもののバナナであることを食べる者に実感させてくれる。おそらく、フィリピンやエクアドルのバナナも地元で無農薬で完熟のものを食べることが出来れば、同じくらいおいしいであろうと思う。安全でおいしいものが多少値段が高いのは残念だが、値段の安さだけに引きずられると、せっかくの買い物が無駄になるような気がするのは私だけではあるまい。
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by s.t.uechi | 2001-10-17 13:14 | 沖縄事典